ナミダ列車
漂う不思議な雰囲気を強調する丸眼鏡に、もっさりとまとまっているくせっ毛の黒髪。
襟元がくたびれたグレーTシャツからは鎖骨が見え、スタイリッシュに履かれているジーンズは比較的華奢な身体を連想させる。
────間違いない。私だ。
どことなくアンニュイなオニーサンは頬杖をつきながら、確かに私のことを見つめてきていたのだ。
「え…」
誰だ…。
この人誰…。
「そんなに驚くなよー」
「いやいや、驚きますよ」
しかも馬鹿みたいなことを言ってくる。
眉をハの字にさせて呆れたように笑うオニーサンに、私はさらに混乱させられた。
「そう?」
「そう、って…まずどちらさまですか?」
「ん?俺?」
「あなたです。私、あなたと面識ありましたっけ?」