桜色の涙

「迅くん……」


「え?」


もしかして今の本音を聞かれた……?目の前にいる彼女は不安げな顔をしている。


どうしよう。せっかく俺と付き合ってくれているのに。


彼女の前で弱音なんて吐いたらいけないのに、不覚にも聞かれてしまうなんて。



「ちょっといいかな?」


「あ、ちょっ……」


少し強引に手を引かれ、クラス中の視線を浴びながら教室の外へ出た。


何を考えているんだろう。もしかして別れ話……?


そんな、まだ付き合ったばかりなのに。俺はこんなにも星那ちゃんのことが好きなのに。




「ここなら大丈夫かな」


そう言って連れてこられたのは人気のない廊下の隅。


人に聞かれたくないような話……それってやっぱり……。
< 105 / 374 >

この作品をシェア

pagetop