桜色の涙

「お疲れ様。すごかったね」


その言葉を聞いて途端に何かがこみ上げてくる。


「場所、変えよっか」


その様子を察したのか、彼女は優しくそう言ってくれた。


審判の時間まであと10分くらいある。周りの目を盗んで体育館を抜け出し、グラウンドの隅に来た。




「星那ちゃん……。俺、負けちゃったよ」


そのまま抱きしめると彼女も後ろに手を回してくれた。


「大丈夫だよ。たくさん頑張っていたこと、私は知っているから」


勝敗よりも努力が大事。そうだよね。確かに星那ちゃんの言う通り。


でも今はそれだけじゃ納得できないほど悔しい。



「でも、江崎くんに勝てなきゃ意味な……」


「そんなことないよ!迅くん、かっこよかった……から」


そんなこと言わないで、と。


寂しそうな表情を浮かべて彼女はそう言った。
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