桜色の涙

〈だって、迅より篠原を見ている奴なんていないだろ。大丈夫だ〉


「そっか……そうだね。ありがとう」


珍しく励ますような言葉を投げかけてくれた渚。


でも、でもね。俺がどんなに星那ちゃんを見ていても彼女も見てくれないと意味がないんだよ。


まだ江崎くんのことを引きずっていると思うから。




球技大会の日。俺は江崎くんを見つめる星那ちゃんの姿を見てしまった。


敵わないってわかっていたけど、どんなに俺が近くにいても彼には勝てないんだと思い知らされた。


でも、彼女だって前に進もうと頑張っている。少しずつだけど心を許してくれていると思うんだ。


だから明日は俺がリードしよう。そう心に決めた。


俺といるときは俺のことだけを考えていてほしい。彼女にも俺のことで頭をいっぱいにしてほしい。
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