桜色の涙
〈……じゃ、俺寝るから〉
「うん、おやすみ」
そう言って渚との電話を切る。今の時刻は10時。高校生ならもう少し起きていても不思議ではないのに。
早寝早起きで規則正しい生活をしている渚は、毎日9時には寝ているらしい。
それなのにいつも眠そうにしているのはどうしてなんだろう。
「ふう……」
明日のことを考えつつも球技大会の日のことが脳裏をよぎる。
星那ちゃんとグラウンドの隅で話してから俺達は体育館に戻った。そして少し晴れた心で5組の審判をした。
でも、間近で江崎くんの活躍している姿を見るととても胸が痛んで、彼女の瞳が輝いていることに気づいて肩を落とした。
もちろん彼女が江崎くんに未練があることは知っているし、それもわかった上で俺達は付き合ったつもりだった。
それでも俺だけを見てほしいと思うのはワガママなのかな。