桜色の涙
「迅くんはなんて言おうとしたの?」
顔を赤くして照れくさそうに聞いてきた星那ちゃん─────いや、星那。
ダメだな、この呼び方には全然慣れない。
「俺も同じ。迅って呼んでよ」
少し意地悪な口調でお願いすると、言葉に詰まって口をパクパクさせる仕草にまた笑いが漏れてしまった。
「……じ、ん」
途切れ途切れに発された俺の名前。
大好きな人に呼んでもらえたのが本当に嬉しくて、人前だというのに思わず彼女を抱きしめてしまった。
「可愛すぎ……」
「えぇっ!迅くん、ここ外だよ?」
あ、今。せっかく「迅」って呼んでくれたのに「迅くん」に戻った。
俺だって意識して「星那」って呼んでいるのにズルい。