桜色の涙

「迅くんじゃなくて迅だよ」


意地悪にそう言うと「あっ」と声を漏らした。無意識だったんだね、やっぱり。


彼女のぬくもりを感じたくて強く強く抱きしめる。



「星那、大好き」


「……うん」


名前で呼び合うようになっても。抱きしめ合ってお互いを間近で感じても。相変わらず星那からの「好き」は返ってこない。


でも、俺はそれでもいいよ。今こうして隣にいてくれるならそれだけで幸せだから。


ゆっくりと体を離してまた手を繋ぐ。それからは何もなかったかのように他愛ない話をしながら歩いた。




◇◆◇



着いた先は雑貨屋さん。可愛らしいアクセサリーや文房具、その他にもいろいろな物が並んでいる。


きっと女子なら毎日来ても飽きないようなところだろう。
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