桜色の涙

「ライトアップまでもう少しだね」


「うん。きっと綺麗だろうな」


俺は最初から星那しか見ていないのに、彼女が想っているのは俺じゃない。


今、誰のことを考えている?俺のことなんてきっと考えていないよね。


手を繋いでいるのに繋がらない心。悔しい。切ない。もどかしい。もっともっと星那の心の中に入りたいよ。



空が暗くなり辺りが見えなくなってきた頃、いよいよイルミネーションが点灯する。


「わぁっ……!」


「すごい……!」


その瞬間、人々はざわめき始め、彼女の声すら聞こえなくなる。



『好き』



星那が俺を見つめていたことを。その言葉を聴き逃したことを。どれだけ後悔してもしきれない。
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