桜色の涙
どうして考えごとなんてしていたんだろう。どうして彼女の方を向いていなかったんだろう。
どうして声が聞こえるくらい近くに寄っていなかったんだろう。どうして……星那からの『好き』が届かなかったんだろう。
「迅!綺麗だね!」
彼女は楽しそうに弾んだ声で話しかけてくる。
本当に綺麗としか言いようのない景色に目を奪われて足が止まってしまう。
そんなイルミネーションを今、星那とふたりで見ているんだ。
「うん。きれ、い……」
その儚げな横顔に。その輝く瞳に。動きが止まった。
綺麗だよ、本当に。目が奪われてしまう。……イルミネーションもだけど星那が。