桜色の涙

俺が淡々とそう答えると星那は少し傷ついたような顔をして。


「……覚えているわけないよね」


悲しそうにそう呟く。その表情と言葉の理由をずっと探していたけど、結局登校中にはわからなかった。


でも、今日がバレンタインデーだと気づいたのは学校に着いてからのこと。




「星那、広瀬くん、おはよっ!」


教室に入ると駆け寄ってきたのは橋本さん。なんだか今日はいつにも増して機嫌がいい気がする。


って、あれ?教室を見渡すと女子達が何やらコソコソと集まって話している。


え、どうしてだろう。本当にわからないんだけど。



そう思いながら渚の机まで行くと。


「渚、その箱どうしたの?」


机の上に置いてある大きな赤い箱に気づいてそう尋ねた。
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