桜色の涙

「あのさ、渚」


「……何」


相変わらず冷たいな、と思いながらも話を続ける。



「5組の江崎くんって見たことある?」


渚は知っているかな。噂には興味なさそうだし知っているわけないか、と諦めかけていると。


「……江崎悠大のこと?」


ポツリと呟いた言葉はしっかりと俺の耳に届いた。



「知っているの!?」


知っているわけないと思っていたから必要以上に驚いてしまった。俺の名前も覚えるまで3日かかったのに……!


「確か、篠原の彼氏の」


そう言って星那ちゃんに視線を向ける。彼女のことも知っていたんだ。まぁ、あんなにクラスで目立っている人はいないもんね。
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