桜色の涙
ダメだ、話せない。思ったよりもさっきの言葉は心に重くのしかかったみたいで、会話が思いつかない。
「……が、学校だけど食べてもいい?」
でもこの雰囲気には耐えられなくて、そんな変な質問をしてしまった。
「うん、いいよ」
星那は目を大きく見開いて驚いていたけど、クスリと笑って承諾してくれた。
小さなハート形のチョコ。ひと粒口の中に入れるとゆっくりと溶けていく。
「美味しい!」
俺のその言葉に返事はなかった。その代わり視線が合って当たり前のように唇が重なる。
嬉しいはずなのに、どうしてこんなに苦しくて泣きたくなるんだろう。
このキスとともに俺の気持ちも届けばいいのに。そんなことを思っていた俺は浅はかだった。
幸せだと感じれば感じるほどそこに別れが迫っていることを、俺はまだ知らなかった。
────口の中は苦くて甘いチョコの味がした。