桜色の涙


◇◆◇



『ちょっといい?』


それは終業式の放課後、俺と星那が一緒に帰ろうとしていたときのこと。俺達の前にいきなり現れた女子3人。


黙って星那を見つめる……いや、睨む人達に嫌な予感がした。



『篠原さんのこと、借りるねー』


悪びれもなくそう言って彼女を連れていく女子達。去り際に『先に帰っていいよ』と星那には言われたけど、何かある気がする。


男子から呼び出されることはあっても女子からなんて滅多にない。



男子からはもちろん告白。星那の人気はすごい。ホワイトデーの日なんて逆チョコを渡す人で教室の前が埋まっていた。


一応受け取ったらしいけど。


『私、迅にしか渡していないのに』


真面目な顔をして受け取った物を見つめる彼女が可愛くて思わずクスッと笑ってしまった。


俺ももちろんお返しは渡した。彼女が前に好きだと言っていたあのウサギの大きなぬいぐるみを家まで届けた。
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