桜色の涙

「星那は俺のことが好きなんじゃねーのかよ」



「え……?」


そう声を漏らしたのは俺。


中にいる人に気づかれていないか不安になり口を覆ったけど、ドアの方へ向かってくる気配はない。おそらく気づかれていないだろう。



でも、この声は……間違いない。


この学校に「星那」って呼び捨てで呼ぶのは、俺と橋本さんと……江崎くんしかいない。


今この中にいるのは江崎くんだろう。



「お前ら、なんのために付き合ってんの?広瀬を振り回してそんなに楽しい?」


────ドクリ。


心臓が嫌な音を立てた。
< 165 / 374 >

この作品をシェア

pagetop