桜色の涙
「やめてっ」
足がすくむ。声が震える。それでも俺は、逃げたくない。
「星那のことだけは悪く言わないで。俺は好かれていなくても構わないから」
咄嗟に口から出たのは本心だった。
俺が傷ついたって構わない。それでも好きな人の傷ついた顔だけは絶対に見たくない。
「迅……」
「なんだよ、彼氏のお出ましかよ」
不機嫌そうにそう言い放った江崎くんの目は冷たかった。
直視できないくらいに冷たくて鋭くて。それなのに俺は “ 寂しそう ” だと思ってしまった。
「ふたり揃って弱いくせに付き合ってどんなメリットがあるわけ?」
江崎くんから吐き出された冷たい言葉。でもその言葉は絶対に間違っている。