桜色の涙
目の前で震えている星那を引き寄せて前を向く。
あんな振られ方をした元カレに話しかけられて。しかもその理由が自分を傷つけるためだなんて、どんなに辛くて怖いだろう。
何も言い返せず俯いている彼女を、俺は強いと感じるよ。
「……何も知らないのに星那のことを弱いなんて言わないで!」
星那は今、自分と闘っている。早く前を向こうと、江崎くんとの過去を思い出にしようと頑張っているのに。
その苦しみを知らない彼にだけは。傷つけた張本人である彼にだけは、絶対に言われたくない。
「今、星那と付き合っているのは俺だから。江崎くんに言われる筋合いはないよ」
確かに彼の方がかっこいいし男らしいし、なんでもできる。
でも今の星那の彼氏は俺だから。それだけは譲るわけにいかない。