桜色の涙
「サッカーしているところならな」
無愛想にそう答えた渚に、あぁそうかと思い出す。そういえば言っていたよね。渚の弟がサッカーをしているって。
渚の話によると江崎くんもサッカーをしていたらしい。
顔はまさにサッカー少年。眩しい笑顔が印象に残っていて、渚の弟にとって憧れの存在らしい。
「そっか。じゃあ本当にイケメンなんだ」
知りたくはないけど見てみたいな。だって星那ちゃんのタイプってことだよね。
「……あ」
見えない相手に闘志を燃やしていると、小さい声で渚が呟く。
どうしたの、と問いかける前に爽やかな香りが漂った。
そして、教室中の視線が集中する先に目を向けると、そこには男の俺でも見惚れるような男子がいた。