桜色の涙
またおとずれる沈黙。でもなぜか言葉を発することができなかった。
寂しそうな表情、何かをなくしたような虚無感。
星那が何かと奮闘しているように見えて、次に何を言われるか嫌でも悟った。
「……別れよう」
悟ったはずなのに、わかっていたはずなのに。なんて言われたのか理解できなくて下を向く。
無言の俺に追い打ちをかけるように星那は言葉を続ける。
「やっぱり迅のことは好きになれないよ」
きっと幸せだと思っていたのは俺だけで。そばにいたいと思っていたのは俺だけで。彼女はずっとこの日を待っていたのかもしれない。
星那が悲しそうにするのは、俺の気持ちをわかっているからなのかな。
江崎くんに振られたときの気持ちは今でも覚えているはず。そんな俺をかわいそうだと思っているのかな。