桜色の涙

またおとずれる沈黙。でもなぜか言葉を発することができなかった。


寂しそうな表情、何かをなくしたような虚無感。


星那が何かと奮闘しているように見えて、次に何を言われるか嫌でも悟った。




「……別れよう」



悟ったはずなのに、わかっていたはずなのに。なんて言われたのか理解できなくて下を向く。


無言の俺に追い打ちをかけるように星那は言葉を続ける。



「やっぱり迅のことは好きになれないよ」


きっと幸せだと思っていたのは俺だけで。そばにいたいと思っていたのは俺だけで。彼女はずっとこの日を待っていたのかもしれない。



星那が悲しそうにするのは、俺の気持ちをわかっているからなのかな。


江崎くんに振られたときの気持ちは今でも覚えているはず。そんな俺をかわいそうだと思っているのかな。
< 170 / 374 >

この作品をシェア

pagetop