桜色の涙

「……迅はすごいね」


どんな意味でこぼれた言葉なのかはわからない。


自分の振られたときと重ねているんだろうか。それともまた別の視点で見て言っている?



「私はいつまでも弱いままだから」


そんなことない。過去と必死に闘っていた星那は毎日輝いていた。


そばで見ていた俺だからこそ星那の強さはわかる。



「迅が羨ましいよっ……」


どうしてそんなことを言うの?どうして泣いているの?振られたのは俺なのにどうして星那が苦しそうなの?


いつまでも弱い自分は変えられないと思っていた。それでも君と出会って少しは変われた気がするよ。


だから、ありがとう。星那。



星那の表情の理由を俺はまだ知らなかった。


そう、知ることのできないまま、また桜の季節を迎えるんだ。


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