桜色の涙

「ありえない!だって星那は広瀬くんのこと……!」


「そんなはずないよ。振られたんだから」


淡々と言う俺の姿に圧倒されたのかふたりは何も言わない。彼女はきっと気づかってくれているんだろう。


でも、星那に振られた今。そんな気づかいは俺の心を乱すだけ。



「でもっ」


「きっと星那はまだ江崎くんのことが好きなんだよ……」


彼女の言葉を遮ってずっと思っていたことを口に出す。


心の中で留めているときは、まだ自分の中で違うと言い聞かせることができた。でも口に出してしまうともう戻れない。



俺じゃ敵わない相手。何で勝負しても負け続けた相手。それが江崎くん。


星那が忘れられないのも無理はない。
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