桜色の涙
きっと渚なりに気をつかってくれているんだろう。でも俺だってどう受け止めたらいいのかわからない。
クラスが違う以上一緒にいられる時間は嫌でも少なくなるし、アピールだってできない。どうやって星那との距離を縮めていこう。
腕を組みながら考えていると。
「悠大くん、好きです!」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
この声の響き具合からして、場所は……階段?
『悠大くん』という言葉にも気になって階段を通ってみると、予想は的中。そこには派手な女の子と江崎くんが向かい合っていた。
「付き合ってください!」
「無理。俺、お前の名前も知らねーから」
好きじゃない人に告白されてもバッサリ振る。それが江崎くんのスタイルなんだろう。
噂で聞いたことがある。彼は毎日違う女子と一緒にいるけど、その人達の名前は覚えていないらしい。