桜色の涙
「一目惚れなの!彼女もいないなら付き合ってよ」
なかなか折れない女の子。江崎くんも呆れたのかため息をついている。
「俺を好きになるなんてバカだな」
鼻で笑ったようにそう言って立ち去ろうとする。でも彼女はそれを見逃さなかった。
「待って!」
江崎くんの腕を引っ張り引き止める。彼はその剣幕に舌打ちをしてから向き直る。
「遊びでもいいからお願いっ!付き合っ……」
「遊び?笑わせんな。俺はもう女で遊んだりしない」
そうキッパリと言い放った言葉には、女の子も俺達も開いた口が塞がらなかった。
星那と別れてからずっと女子で遊んでいた彼が『もう女で遊んだりしない』なんて衝撃発言をしたんだから。
「そっか。でも諦めないから!」
彼女はどうやら本気らしく前向きに挑もうとしている。その姿が微笑ましく、まるで俺と星那を見ているようで胸が痛くなった。
俺だって諦めたくなかったよ。でも、好かれるためにはいくつもの努力を重ねないといけない。
ただひとり好きな人に好きになってもらうために。