桜色の涙

「すごい!」


「さすがー!」


江崎くんが立ち去ると、告白していた女子に拍手がおこっていた。どうやら俺達以外にも盗み聞きしていた人がいたらしい。



そして『江崎くんがもう遊ばない』という噂もすぐに広まった。


取り巻きだった女子達はとても残念がっていたけど、俺はそれで良かったと思う。


終業式、資料室で見たあの冷たい表情。その裏側に隠してあった心に彼は打ち勝ったのかもしれない。


後ろ姿からは江崎くんの心はわからなかった。




教室に入るとなんだか騒がしかった。前のクラスも賑やかで好きだったけど、このクラスも楽しみ。


「あれ?渚、あの子って」


「江崎に告白していた奴だろ」


なんとクラスの輪の中心で楽しそうに話していたのは、さっき江崎くんに告白していた子だった。


長い髪は巻かれていて少し茶色く染まっている。スカートの丈も短いし……うん、完全に校則違反。



「あーっ!ちょっと、さっきの告白……!」


呆れ顔で彼女を見ていると気がつけばこっちを指差していた。クラスの中心で俺達に向かって大声で叫ぶ。


「盗み聞きしていたでしょ!最低!」


キッパリと言い放つ彼女に周りが騒がしくなる。
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