桜色の涙
「……あの、ごめんなさい」
目の前にはさっきの黒髪の女の子。
「私、小谷千佳(こたにちか)って言います」
丁寧に自己紹介をしてお辞儀をする彼女は小谷さんと言うらしい。
でも意外だな。こんなに礼儀正しい子と派手な茶髪の子が友達なんて。さっきも仲良さげに話していて物珍しい光景だった。
「ちょ、千佳!だってこの人達が盗み聞きしたんだよ?」
「盗み聞きなんて人聞きの悪いこと言ったらダメだよ」
彼女の行動に気づいたのか、告白していた女の子がこちらへ歩み寄ってくる。そして俺達を睨みつけるように見上げる。
「矢代理々愛(やしろりりあ)。盗み聞きなんて趣味悪すぎっ」
矢代さんはかなり腹を立てている様子で、腰に手を当てながら話す。
本当に正反対なふたりなんだな。でも面白そう。第一印象はそれだった。