桜色の涙
「じゃ、またな」
「うん、後でね」
話し終わったのか戻っていく江崎くん。見送る星那ちゃんは幸せそうな顔をしている。
噂で聞いたことがある。星那ちゃんと同じ中学校からこの高校に来た人はふたりいるって。
中学校が同じってことは小学校はどうだったんだろう?もうひとりは誰なのかな?
そう考えているうちに、星那ちゃんの回りには人だかりができている。
「星那ちゃん、可愛いよねー」
「江崎くんも超かっこいい!」
確かに本当のことだから否定できない。
みんなにとってふたりは高嶺の花で手の届かない存在。呼び捨てで呼んでいる人なんて見たことがない。
きっとお互いだけが呼べる特権みたいなものなんだろう。