桜色の涙


学校へ向かう途中の桜の木。今日も早く行って写真を撮ったり眺めたりしていた。


懐かしいな。この桜の木が俺と星那を繋いでくれたんだ。



あれ?遠くに目をやると、誰もいないと思っていた桜の木の下に誰かがいる。


あの後ろ姿は……。


「星那!」


走ってそこまで追いつくと、驚いたように振り返ったのは─────やっぱり星那。



「じ、ん……」


彼女は俺の名前を呟くと足早に逃げようとする。


元カレに再会して気まずいことはわかっているけど、俺はまだ一緒にいたい。



「星那、待ってよ」


手を掴むと振りほどかれそうになる。


付き合っていたときは手を繋いでいても不思議ではなかったのに、別れた今だとすごく後ろめたい。
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