桜色の涙
「ごめんね。これで最後にするから……っ」
そうじゃないときっと迅は前に進めないから。一緒にいても迅は幸せになれない。それなら私からこの手を離そう。
……そう、どんな手を使ってでも。
「最後になんてしなくてもいいのに」
そう返ってきた言葉は聞かなかったことにしよう。
迅の気持ちは痛いほど伝わっているよ。でも私の決心は変わりそうにないんだ。
どうして失ってから気づくんだろう。
君のことがこんなにも大切だったことに。君のことをこんなにも好きだってことに。
────この気持ちに気づいたら終わり。
気づいてしまったから私は迅を手放さなければいけない。だから私はこの気持ちに鍵をかけるの。
今日も私の目の前を舞う小さくて儚い桜のように、そっと目を閉じて涙を流した。