桜色の涙
その言葉の代わりに俺は唇を重ねていた。
忘れていた感覚。ぽっかりと空いた心の傷。それらが全て埋まっていくような気がした。
俺はやっぱり星那が好き。
『ごめんね。これで最後にするから……っ』
その言葉にはどんな意味があるんだろう。ごめんね?最後って何?
俺はこれからも星那と会うつもりなのに、ひとりで勝手に完結させないでよ……。
「……くーん、広瀬くん?」
「大丈夫ですか?」
心配そうな矢代さんと小谷さんの顔を見て悟った。俺はまたあの日のことを思い出してボーッとしていたんだと。
「ううん、なんでもないよ」
関係ない人にまで迷惑かけたくない。そう思って深く突っ込まれないように返す。首を傾げながらもみんなは何も聞いてこなかった。
────また歯車が動き出していたことを、このときは誰も知らなかった。