桜色の涙
「ここ、って……」
着いたのは、星那とクリスマスデートのときに来た雑貨屋さん。
確かに可愛い物が多かったし、女子はみんな好きなのかもしれないけど、ここに入るにはまだ勇気が足りない。
「みんなで街に来たとき、いつも広瀬くんが見ていたから。私も来てみたかったんです」
「え?」
俺がいつも見ていた?そんなことに気づいていたの?
というか、無意識のうちに星那との思い出の場所を見ていたなんて、俺はやっぱり忘れられないみたい。
「……ここは星那との思い出の場所なんだ」
そう言うと小谷さんは少し困ったように顔を歪める。
違うんだよ。彼女が悪いんじゃなくていつまでも思い出に縛られている俺が悪いんだ。
「ご、ごめんなさい。他のところに……」
「いいよ、入ろう」
いつまでも甘えていられない。早く前を向いて向き合うんだ。