桜色の涙

店内に入ると人がたくさんいて、冷房も効いているけど暑い。


「わぁっ、可愛い」


隣にいる小谷さんは店内のレイアウトや品物に目を奪われているようだった。


薄暗い照明。壁に貼られたポスター。それらが女子の心を掴む物に違いないだろう。



「あれ?これって広瀬くんのペンケースに……」


小谷さんが指差していたのは、俺のペンケースについているウサギのストラップだった。


星那と別れてからもどうしても外せなかったストラップ。


あのときの星那は、見ている俺まで嬉しくなるくらいに喜んでいたな。


別れても一緒に過ごした時間だけは変わらない。俺にとっては大切な宝物なんだ。
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