桜色の涙
「……うるさい、見んなよ」
そう言って手で顔を隠す渚。いつもはクールな渚がこんなに照れるなんて……!
さすが橋本さん。このふたり、けっこうお似合いかも?
「迅、行くぞ。アイツといると疲れる」
ぶっきらぼうにそう言って俺を急かす渚。でも楽しそうだったな、なんて。
そのまま渚と玄関へ歩いていると、資料室から声が聞こえてきた。
今は使われていない部屋で立ち入る人もいないらしい。そんなところに一体誰が……?
ゆっくりと近づいてみると、そこから聞こえた声は。
「んっ……ゆう、だ……っ」
「星那、好きだ」
まさか、星那ちゃんと江崎くん……?
ダメだとわかっているけど手はどんどんドアへ伸びていく。