桜色の涙
「……っ」
どうしてキスなんてしているの。俺はここにいるよ。星那のすぐ近くに。
でも、その心の中にいるのは俺じゃない。いつだって江崎くんなんだ。
お祭りのときも見た楽しそうなふたりの姿。
やっぱりヨリが戻ったんだよね。それを見せつけるために俺をここに呼んだんでしょ……?
1度好きになった人だもんね。幼馴染みなんだから好きになるよね。
俺の方がずっとずっと星那のことが好きなのに。大切にできる自信があるのに。
彼女は俺じゃダメなんだ。
沈んだ心のまま少し離れたところでふたりを見ていると、ふいに彼女が振り返った。
ふたりの視線は俺に注がれる。
「え、迅……」
やっぱり俺がいることに気づいていなかったんだろう。驚いた表情をしていた。
江崎くんは変わらず冷たい表情だった。