桜色の涙

「今までごめんっ……」


震える声でそう言うと途端に俺の頬をひと筋の涙が伝った。


どうして?わかっていたことなのにどうして涙が出るの?しかもその姿を星那に見られるなんて。



俺は走った。悲しい気持ちなんて忘れるくらい走った。


この気持ちは捨てるんだ。いや、捨てなきゃいけない。今すぐに。




「小谷さんっ!」


「え、広瀬くん?」


俺が向かった先は小谷さんのところ。


ちょうどお風呂あがりだったらしく、矢代さんと一緒に部屋へ戻っていくところだった。



「えっと……理々愛、先に戻るね」


何かを悟ったのか矢代さんはそそくさと部屋へ戻っていった。


今はふたりきり。さっきの星那と江崎くんのキスシーンがよみがえる。もう早く頭の中から消えてよ……。
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