桜色の涙
「……返事、いいかな」
こんな気持ちのまま答えを出してはいけない。自分の思いを押しつけてはいけない。そんなことわかっていたつもりだった。
でも、俺は……。
「俺で良ければ付き合ってください」
俺は逃げたんだ。これ以上辛い思いをしたくなくて、無理に思い出を封じ込んだ。
星那への気持ちはもう忘れよう。忘れて彼女と一緒に毎日を過ごしていくんだ。
きっとそれがみんなにとっての幸せになるはずだから。
最低な決断。そんなことはわかっている。渚にも批判されるに決まっている。
それでも俺にはわからなかったんだ。この気持ちを乗り切る方法が。
「……はい、よろしくお願いします」
それでも少し寂しそうに彼女は笑った。