桜色の涙

「……迅、やめろよ」


腕を掴まれて動きが止まる。小さくて低い声だけど、静止の声はしっかりと耳に入った。


「見たら後悔するのは自分だ」


どうして?どうして渚にそんなことがわかるの?俺が後悔する、なんて。



「お前、篠原のこと……」


「ちが……っ!」


言いかけた渚の口を塞ぐように掴まれた手を振りほどく。そんなこと言われる筋合いないじゃないか。


それでも言葉を遮ったのは、きっと言おうとしていることが図星だったから。



「んんっ……」


「……星那」


この中で何が起こっているのかはわからない。覗かない限り知ることなんてできないけど。


────知りたくない。その思いだけが胸の中にあった。
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