桜色の涙

こんなに辛い思いをするなら、好きになんてならなければ良かった。こんなに苦しい思いをするなら、恋なんてしなければ良かった。


恋が素敵なんてそんなのひとときの魔法。本当はすごく切なくて苦しくて、ひとりじゃ乗り越えられないよ。



『小谷さんと付き合った方が、迅は幸せになれるよ』


そう言って背中を押したときも。本当は好きだったよ。離れたくなんかなかったよ。ずっとそばにいたかったよ。


でも迅にとっての幸せは私と一緒にいることじゃない。それくらいわかっている。



彼女は心から迅を好きでいてくれているんでしょ?


それなら私の分まで幸せになってよ。素直になってよ。


ずっとずっと、まっすぐな迅のままで。君を愛してくれるその人と……。
< 260 / 374 >

この作品をシェア

pagetop