桜色の涙
「今度3人で出かけられないかな」
無理なお願いだってそんなことはわかっている。それでも杏と約束したんだ。
もう泣いている姿は見たくない。小学2年生離れしているけどまだ子供だし、俺の妹という事実に変わりはないから。
「……考えておくわ。でも期待しないで」
それだけ言うと母さんはリビングから出ていった。俺達を残して玄関のドアに鍵をかける音が聞こえる。
「……ありがとう」
行ってらっしゃいの代わりにありがとうとふたりだけのリビングで呟いた。
俺は知っている。母さんが俺達のために身を粉にして働いてくれていること。
そして、俺達のことを大切に思ってくれていることも。
だから一緒にいられる時間が少ないのも仕方ないと思っている。それはきっと杏だって同じ。