桜色の涙

目を逸らす日々




「あのっ……デ、デート行きませんかっ」


そう提案してきたのは小谷さん。




去年よりも短く感じた夏休みはあっという間に終わり、新学期が始まった。


今はそれから1ヶ月が経ち、少し肌寒くなってくる10月。制服の上から薄手のコートを羽織る小谷さんと下校中。



俺が渚と一緒に帰ろうとしていると。


『広瀬くん、一緒に帰りませんか?』


彼女が後ろからそう言って追いかけてきた。



渚は空気を読んで先に帰ってくれたみたいで、俺達はこうして一緒に下校している。


確かにいつもとは違う緊張感が漂っているとは思っていた。でもまさか、女子からデートに誘われるなんて思ってもいなかった。


彼女は今も俯いて俺の返事を待っている。



「うん、いいよ」


いつもは大胆とは言い難い彼女が俺のために言ってくれたんだ。


こんなに想ってもらえるなんて幸せだな。だから俺も好きになる努力をするんだ。


自分を、そして彼女を傷つけないためにも。
< 279 / 374 >

この作品をシェア

pagetop