桜色の涙
目を逸らす日々
「あのっ……デ、デート行きませんかっ」
そう提案してきたのは小谷さん。
去年よりも短く感じた夏休みはあっという間に終わり、新学期が始まった。
今はそれから1ヶ月が経ち、少し肌寒くなってくる10月。制服の上から薄手のコートを羽織る小谷さんと下校中。
俺が渚と一緒に帰ろうとしていると。
『広瀬くん、一緒に帰りませんか?』
彼女が後ろからそう言って追いかけてきた。
渚は空気を読んで先に帰ってくれたみたいで、俺達はこうして一緒に下校している。
確かにいつもとは違う緊張感が漂っているとは思っていた。でもまさか、女子からデートに誘われるなんて思ってもいなかった。
彼女は今も俯いて俺の返事を待っている。
「うん、いいよ」
いつもは大胆とは言い難い彼女が俺のために言ってくれたんだ。
こんなに想ってもらえるなんて幸せだな。だから俺も好きになる努力をするんだ。
自分を、そして彼女を傷つけないためにも。