桜色の涙

「も、もちろんだよ!あんなに有名だし……」


「俺が有名?……へぇ」


うわぁ、近くで見ると本当にかっこいいな。この容姿なら星那ちゃんが好きになるのもわかる。


そう思うといきなり心臓がズキッと痛む。なんなんだろう、この感覚は。



「そういえば星那ちゃんは?」


辺りを見渡しても彼女の姿は見当たらない。


「星那なら忘れ物取りに行ったけど」


……あ、そっか。忘れ物か。また胸騒ぎがする。江崎くんと向かい合っている状況には慣れない。



「さっき、覗こうとしただろ」


覗く……?


「あーーっ!」


って、バカじゃん。そんなに大きい声を出したら肯定しているのと同じこと。



「ふっ、バカなの?お前」


「ご、ごめんなさい。覗こうとしました……」


覗こうとなんてしなければ良かった。せっかく渚が止めてくれたのにバレていたなんて。
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