桜色の涙

「えっ、本当ですか……?」


顔を上げた彼女は信じられなさそうに瞬きをしている。きっと俺が断ると思っていたんだろう。



「本当だよ。今週の土曜日でいい?」


俺は笑顔でそう返した。彼女を不安にさせたくはない。


落ち着きがあって、それでいて一途な人になんて、なかなか出会えないよね。


そんな子が俺のことを好きになってくれたんだ。今は無理でも、いつかはその気持ちに応えたい。



「はいっ、ありがとうございます」


久しぶりに見た満面の笑み。それをもっと見ていたいと思った。


そう、また星那の顔と重なって、ずっと笑っていてほしいと思ったんだ。
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