桜色の涙
「あれ?」
ふと驚いたような声をあげる。気になってその視線が向く方向を見てみると、そこには矢代さんがいた。
しかもその動きは不審で、何かから隠れるようにコソコソと歩いている。
「えっと、矢代さん?」
「へっ!?」
後ろから近づいて声をかけると、彼女はまるでカエルのように飛び跳ねた。
そんなに驚かせてしまうなんて。少し反省しながらも小谷さんと揃って矢代さんを見つめる。
「なんだ、千佳と広瀬くんかぁ」
驚かさないでよ、と彼女はおどけて笑う。つられて俺も笑ったけど気になるのはそこじゃない。
どうしてあんなに怪しい行動をしていたのか。その答えは彼女の少し前を歩くふたりにあった。