桜色の涙

「これ、見てよ。悠大くんが笑っているお宝写真!」


すごいでしょ、と彼女は腰に手を当てて見せびらかす。俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……。


「星那と江崎くん、か……」


彼女の持つ写真には、笑顔の江崎くんとすました顔で笑う星那が写っていた。


大丈夫、大丈夫。ふたりが一緒にいるところを見たってもう怖くない。



それよりも頭に浮かんだのは、やっぱりふたりはヨリを戻したんだ、ということ。


江崎くんが女遊びをやめた理由もきっと星那にあるんだろう。


星那もずっと江崎くんのことが好きだったわけだし、ふたりがまた付き合うのは当たり前のことだよね。


それなのにどうしてこんなに胸が痛むんだろう。今の俺には関係ないのに、どうして……。




結局ふたりには話しかけずに、小谷さんを家へ送り届けてから帰った。


その間も悲しげに隣を歩く彼女のことは見えないフリをしていた。
< 282 / 374 >

この作品をシェア

pagetop