桜色の涙
「これ、見てよ。悠大くんが笑っているお宝写真!」
すごいでしょ、と彼女は腰に手を当てて見せびらかす。俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……。
「星那と江崎くん、か……」
彼女の持つ写真には、笑顔の江崎くんとすました顔で笑う星那が写っていた。
大丈夫、大丈夫。ふたりが一緒にいるところを見たってもう怖くない。
それよりも頭に浮かんだのは、やっぱりふたりはヨリを戻したんだ、ということ。
江崎くんが女遊びをやめた理由もきっと星那にあるんだろう。
星那もずっと江崎くんのことが好きだったわけだし、ふたりがまた付き合うのは当たり前のことだよね。
それなのにどうしてこんなに胸が痛むんだろう。今の俺には関係ないのに、どうして……。
結局ふたりには話しかけずに、小谷さんを家へ送り届けてから帰った。
その間も悲しげに隣を歩く彼女のことは見えないフリをしていた。