桜色の涙
「あの、広瀬くんっ……」
緊張しているのか少し上ずった声で呼び止められる。赤く染まった顔はなんだか可愛く見えた。
「手繋いだらダメですか?」
絞り出された言葉に少し驚いた。デートをして手を繋ぐ。それはきっと普通のことなんだろう。
それに俺達は付き合っている。別に繋いでいたって不思議ではない。
「ダメなわけないよ」
彼女の手を引き寄せてぎゅっと握る。秋風に触れていた手は少し冷たかった。
繋いだ手の指をそっと絡める。そう、いわゆる恋人繋ぎをする。
「その代わり俺からもお願いがあるんだけど」
そう言うと、彼女はなんですか?と言いたげな顔で俺を見つめる。
不思議な感覚がする。星那以外の人と手を繋ぐ日がくるなんて。