桜色の涙
植物園内を歩き回り、1時間くらい経った頃。
俺達は少し小さい植物園のお店に立ち寄って休憩中。
「ねぇっ、広瀬くん」
さっきまでは敬語だったのに今はもうタメ口に慣れた様子の小谷さん。戸惑いもなく俺に話しかけてくる。
「見て。これ綺麗だね」
「あ……」
そう言って差し出す彼女の手の中にあったのは桜の押し花。
それを見て1番に思い出すのは、星那と初めて出会ったときのこと。今でも鮮明に思い出せる。
あの桜の木はもう枯れてしまった。できることなら今年もゆっくり星那と一緒に見たかったよ。
「……っ」
ダメだよ。ほら、笑わなきゃ。俺は小谷さんと付き合っているんだから。
星那と付き合っていたのはもう過去の話。だから星那のことなんて考えちゃいけないんだ。