桜色の涙


「今日はありがとう。楽しかったです」


「うん、俺も」


結局小谷さんとは閉園時間まで植物園にいた。気持ちは重たかったけど楽しめたと思う。



「あの、私っ……」


また明日、と手を振ろうとすると、彼女が大声をあげた。その目はいつにも増して真剣だった。


「私、広瀬くんのことが好きなんです。それだけは忘れないで」


敬語とタメ口が混ざった口調で必死に訴える。



「……うん、ありがとう」


俺は最低なんだ。彼女は本気で俺のことを想ってくれているのに、その気持ちに応えられないなんて。


星那も、俺から『好き』って言われたとき、こんな気持ちだったのかな。そう考えると一段と気持ちが暗くなった。
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