桜色の涙
「では、また学校で」
「……ん、じゃあね」
家の中へ入っていく彼女を見届けてからまた歩きだす。
もうダメだ。誤魔化そうと思っても、俺の心はどうしても星那に向いてしまう。
いつまで経っても星那を探す癖は治らない。
「ははっ……偽善者かよ」
どこからかそんな渇いた声が聞こえてきて急いで辺りを見渡す。それでもその姿は見当たらない。
「本当はお前、星那のことが好きなんだろ?」
その声とともに姿を現したのは江崎くんだった。
「そ、そんなわけない。俺は小谷さんのことが……っ」
どうしよう、声が震える。俺の心を見透かしているように彼はニヤリと笑う。