桜色の涙
「別に、いいよ」
俺の今の彼女は小谷さん。星那じゃないんだ。俺と星那は元恋人。今は関わることもない。
どんなに俺が想っても届かなかった。ずっと星那は江崎くんを見ていた。
宣戦布告なんてしなくても、星那とは両想いなのに。
「あっそ。素直じゃないんだな」
彼はそれだけ言って立ち去っていった。
素直。そういえば渚も言っていたよね。『素直でいろよ』って。
素直って、自分らしさって、なんだろう。自分のしたいようにまっすぐに向かっていくこと?
それならもうできている。俺は星那に幸せになってほしい。そのために全力を尽くしているつもり。
それでも足りないというのだろうか。
それからのことはよく覚えていない。気づいたら隣には杏がいて、俺は繕ったような笑みを浮かべていた。