桜色の涙
解放する勇気
《 千佳side 》
季節は秋。紅葉が学校の前を彩る美しい季節になった。
でも私の心は曇ったまま。女心と秋の空、とあるように、私の心も一喜一憂してばかり。
「あ、の……広瀬くん?」
「え?」
最近、広瀬くんの様子が変なの。
……ううん、最近なんかじゃない。付き合ったときからずっとそうだった。
でも、気づかないフリをしていたの。そうでもしないと、彼の隣にはいられないと思ったから。
私と広瀬くんが付き合ったのは宿泊学習のときのこと。
1日目の夜、ロビーに彼を呼び出して思い切って告白をした。
結果は保留。返事は後日教えてくれるとのことだった。
昔から大人しいと言われていた私が自分から告白したことに、理々愛は褒めてくれた。
中学生のときから仲のいい友達。性格は正反対だけど、なんだか気が合って一緒にいると楽なんだ。