桜色の涙


「じゃあ行こうか」


そう言って教室へ戻ろうと歩き始めた広瀬くんだけど、すぐに足を止めた。


「広瀬くん……?」


ボーッとして動かない。


どうしたんだろう、と覗いてみると、その理由がハッキリとわかった。



目の前には─────篠原さんがいた。その理由に気づいてモヤモヤとした感情が胸に広がる。


ねぇ、痛いよ。こんなにも。


彼女も驚いたように目を見開いたかと思うと、すぐに目を逸らして体育館に入る。


どうやら次の体育は3・4組らしい。



広瀬くんは体育館の入口で少し立ち止まったかと思うと。


「……ごめんね、行こう」


振り返ってバツが悪そうな顔でそう言った。でも私はそれに微笑み返すことができなかった。
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