桜色の涙
気づいた本当の幸せ
「……どうして?」
声が震えた。
だって、いきなりそんなことを言われるなんて思っていなかったから。
今は小谷さんと下校中。ふたりで並んで少し話しながら歩いていた。
だから、まさか別れ話を切り出されるなんて思わなかったんだ。
「広瀬くん、私のこと好きじゃないよね……?」
その言葉にヒヤリとした。俺が星那を見ていたこと、知られたのかもしれない。
「ねぇ、広瀬くんは、篠原さんのことが好きなんだよね……?」
あぁ、ほら。やっぱり。いつからだろう。どのタイミングで気づいたんだろう。
気づいていたなら、どれだけ苦しい思いをさせてしまったんだろう。
「ごめっ……小谷さん、本当にごめん」
どんなに謝ったって足りないよ。星那のことを忘れようとするほどに、俺の心の中は彼女でいっぱいになっていった。